
推し活仲間がくれた「つながり」と、それでも残った不安―40代おひとりさまが考え始めた人と仕組みの備え
2026.01.04



「最近、仕事以外で笑ったのっていつだっけ?」
都内の商社で事務職として働く、45歳の恵さん(仮名 )は、ある金曜日の夜、帰宅してテレビをつけたまま、ふとそんなことを思いました。
仕事は忙しすぎるわけではありません。けれど、日々のルーティンに追われているうちに気づけば職場と自宅の往復が当たり前になっていました。
友人とは年に数回会う程度。休日は平日の疲れをとるために昼まで寝て、溜まった家事を片付け、誰とも一言も話さないまま終わる日も珍しくありません。
「別に寂しいわけじゃない。でも、私の人生、ちょっと彩りが足りない気もする」
そんな乾いた日常に、突然鮮やかな色が差し込んだのは、何気なく見ていた動画配信サイトがきっかけでした。
推し活がくれた、久しぶりのときめきと話せる相手
最初は偶然目にしただけでした。ある男性グループの歌声と、楽しそうに話すメンバーの笑顔。なぜか目が離せなくなり、関連動画を次々と見ているうちに、恵さんはいつの間にかそのグループの「沼」に落ちていました。
新曲が出ればチェックし、配信ライブがあればチケットを買う。ある日、SNSでファンコミュニティを見つけ、勇気を出して参加してみました。参加者は、自分と同じように40代前後でひとり暮らしをしている女性も少なくありませんでした。
「同世代ですね、よろしくです!」
「一緒です!おひとりさま推し活、最高ですよね(笑)」
画面 の向こうからの温かい歓迎に、恵さんの頬が緩みます。それからは新曲の感想や、推しの尊さを語り合う日々。会社では話せないような熱量で会話できる相手ができたのです。
ゆるいグループチャットが、日常の支えになっていく
数か月もすると、同じ関東エリアに住む数人で、LINEのグループチャットを作るようになりました。
「次のライブ、チケット取れた?」
「仕事で嫌なことがあったけど、推しの動画見たら元気出た」
そんな他愛もないやりとりが、恵さんにとっては思った以上に心地よいものでした。深刻すぎない距離感だからこそ、家族や古くからの友人よりも気軽に弱 音をこぼせる。家族でも職場でもない、「推しをきっかけにゆるくつながる人たち」が、いつしか恵さんの心の安定剤になっていました。
高熱で寝込んだ夜。静寂の中でよぎった「もしも」
そんなある冬の日。恵さんは久しぶりに39度近い高熱を出して寝込んでしまいました。
インフルエンザの流行期。関節の痛みと悪寒で、トイレに立つのも一苦労です。冷蔵庫には食べ物がほとんどなく、買い物に出る気力もありません。備蓄していたスポーツドリンクでなんとかやり過ごしながら、天井を見つめていると、ふと黒い不安が頭をもたげました。
「これ、もしもっと重い病気だったら、どうするんだろう」
熱があるせいもあって、思考はどんどん暗い方向へ傾いていきます。
このまま意識を失って倒れてしまったら。会社への連絡は?自分の身の回りの世話や、入院の手続きを実際に動いてくれる人はこの部屋には誰もいません。そもそも誰にも見つけてもらえない可能性すらあります。
スマホの中にはたくさんの「つながり」があるはずなのに、物理的なこの空間には、自分ひとりしかいない。その圧倒的な事実が、熱い体とは裏腹に、心を冷たく凍らせていきました。
「最近見ないけど大丈夫?」と言ってくれる存在
数日後、ようやく熱が下がり 始めたころ、スマホの通知を見て恵さんはハッとしました。グループチャットに、こんなメッセージが来ていたのです。
「そういえば恵さん、ここ数日チャットで見かけないけど大丈夫?忙しいのかな?」
どうやら、いつもなら即座に反応する推しの情報に対して、自分だけが静かだったことに、メンバーが気づいてくれていたようです。
「実はちょっと熱を出して寝込んでて……。だいぶ良くなりました」
そう返信すると、すぐにスタンプと共にメッセージが返ってきました。
「ええっ、それは大変でしたね」
「無理しないでね。ライブまでに治せばいいんだから!」
スマホの画面が滲んで見えました。自分の不在に気づき、気にかけてくれる人がいる。そのことが単純に嬉しく、孤独だった数日間の不安が少しだけ溶けていくようでした。
自然と生まれた「ゆるい見守りルール」
後日、オンラインお茶会で、恵さんはあのときの不安を打ち明けてみました。
「ひとりで高熱出して寝てたら、ちょっと怖くてさ。“あれ、これ誰にも気づかれないまま終わるパターンでは?”って」
すると、画面越しのメンバーた ちも深く頷きました。そこから自然と、「数日まったく反応がない人がいたら、誰かがDMで一言声をかける」という、ゆるいルールのようなものができました。
義務感のある安否確認ではありません。あくまで推し活を楽しむための生存確認。それでも、誰かが気にしてくれるかもしれないという感覚は、おひとりさまの日常に小さな安心の灯をともしてくれました。
グループチャットでは埋められない穴がある
ただ、恵さんは同時に、冷静な現実も見つめていました。
「たとえ誰かが心配してくれても、その先に、実際に動いてもらうのは簡単ではないよな」
オンラインの仲間は大切な存在ですが、それぞれに仕事や家庭があります。もし恵さんが倒れたとして、遠くに住む彼女たちがすぐに駆けつけられるとは限りません。部屋の鍵の場所も、通院している病院も、彼女たちは何も知りません。
そして何より、もし自分が誰にも看取られずに命を終えたとしたら。部屋に残された大量の推しグッズ、未払いのままのサブスク契約、銀行口座に残ったお金。それらの始末を、推し活仲間に背負わせることはできません。
心の支えと現実の手続きは、役割が違うのです。
熱に浮かされながら感じたあの恐怖は、単なる寂しさではなく、「自分の人生の始末をどうするか」という、手続き上の空白に対する恐怖だったのだと気づきました。
任せられる仕組みの必要性に気づく
それから恵さんは、少しずつ仕組みとしての備えにも目を向けるようになりました。
● 自分が急に入院したとき、身元保証人になってくれるサービスはあるか。
● 意識がなくなったあと、契約の整理を誰にお願いするのか。
● 自分が亡くなった後の葬儀や片付けをどうするのか(死後事務委任)。
ネットで調べていくうちに、おひとりさま向けに、これらの手続きを包括的に支援してくれる民間サービスや士業のサポートがあることを知りました。
もちろん、サービスの内容や費用、信 頼性は提供する団体や専門家によって大きく異なります。実際に契約するときは、複数を比較したり、無料相談などで詳しく話を聞いたりすることが前提になります。
それでも、自分の死後やもしものときのことをあらかじめ誰かやどこかに託しておけるという選択肢がある。
今すぐ契約するかどうかは、急いで決めなくてもいい。ただ、いつか必要になったら検討できる仕組みがあると知っておくだけでも背負っていた荷物が少し軽くなった気がしました。
人とのつながり+仕組み=ようやく見えてきた安心
ある日、グループチャットで、恵さんは少し真面目なトーンでこんな話をしてみました。
「この前、もしものときのことを考えて、自分の後のことをお願いできる仕組みがあるって知ったんだ。みんなはそういうの、考えたりする?」
重い話題で空気を悪くするかな、と心配しましたが、メンバーの反応は意外にも真剣でした。「実は私も、親を見送った後に自分のことを考えてた」「エンディングノートだけは書き始めたよ」といった声が返ってきます。
恵さんは画面に向かって言いました。
「私たちはお互いを気にかけることはできるけど、現実の手続きまで全部を背負うのは難しいよね。
だからこそ、人とのつながりで心を支え合って、任せられる仕組みで現実を守る。両方あった方が、もっと安心して推し活できるかもね」
その言葉に、みんなが深く頷いているのが分かりました。「それなら、長生きして推しを見守り続けなきゃね」と誰かが言い、またいつもの笑い声が戻ってきました。
推し活仲間が教えてくれた一人じゃないという感覚
推し活や趣味のつながりは、楽しい時間を共有する場であると同時に、さりげなくお互いの存在を気にかけ合う場にもなり得ます。
40代のおひとりさまにとって、心を支えてくれる仲間の存在は、何にも代えがたい心強いものです。
一方で病気や老い、そしてもしものときに備えるためには善意の人だけに頼るのではなく、手続きやお金・暮らしを物理的に支えてもらえる仕組みを持っておくことも大切 です。
人とのつながり(ソフト)で心を守り、仕組みとしての備え(ハード)で生活を守る。
その両方がそろったとき、おひとりさまの人生は今より少しだけ軽やかに、そして「明日もまた楽しもう」と思える、安心なものになっていくのだと思います。
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